職業訓練が始まって数日。 授業のスピードについていくのに必死で、周りをゆっくり見る余裕もなかった。
ふと教室を見渡したとき、ようやく気づいた。 「あれ、50代は私を含めて3人くらい?でも、あの人のほうが年上かな…?」 そんなふうに思っていたのだけれど、卒業後に分かったのは、実は私が最年長だったということだった。
受講生の多くは20代〜30代。 40代がちらほら。 ハローワークの人が「やめておいたほうがいいよ」と言った理由が、なんとなく理解できた。
「私、ここでやっていけるのかな」 そんな不安が、静かに波のように押し寄せてきた。
でも、授業が始まると、その不安はすぐに薄れていった。 若い子たちは吸収が早く、講師の説明にうなずきながらどんどん作業を進めていく。 私はというと、メモを取りながら一歩ずつ追いかける毎日だったけれど、新しいことを知るだけで楽しかった。
IT系の仕事をしていたおかげで、ブラインドタッチには自信があった。 タイピングが速かったおかげで、サイト制作の授業にはなんとかついていけた。 むしろ大変だったのは、PhotoshopやIllustratorの操作を覚えることだった。
でも、年齢を重ねたからこそ、焦りはなかった。 一発で覚えられないなら家で復習すればいい。 何度も繰り返して、手に覚えさせればいい。 ひとつずつでも積み重ねていけば、きっと形になる。 そんな前向きさだけは失わないようにしていた。
だって、50代半ばで若い子に混じってWeb制作を学ぶなんて、できなくて当たり前。 むしろワクワクしかなかった。 独学で積み上げてきた“貯金”もあったから、「へぇ〜」「おぉ〜」と感動しながら学べることが嬉しかった。
本当に、楽しい半年間だった。
卒業後、みんなで集まったときのこと。 「タイピング速かったですよね」 「最後まで授業についていけてたの、あなたくらいですよ」 そう言われて、思わず「へっ」と声が出た。
「JavaScriptの授業なんて、わかったふりしてうなずいてただけで、全然できなかった」 そんな告白を聞いて、「えっ、そうだったの?」と驚いた。
私はただ楽しく学んでいただけだったけれど、 50代でも完走できたんだ そう思うと、胸の奥がじんわり温かくなった。
私はWebデザインを学んだのだから、みんなWeb系の求人に応募するものだと思っていた。 でも、実際は事務職を希望する人が多かった。
若い子なら、スキルが足りなくても入ってから育ててもらえる。 でも、私のような50代は“即戦力”じゃないと採ってもらえない。 その現実を思うと、胸の奥が少しだけきゅっとした。
訓練で学んだ技術を生かせる仕事に就きたい。 そう願いながら就活を始めたけれど、現実はなかなか厳しかった。
そしてここから、私は 「習ったことが仕事になるとは限らない」という現実 と向き合うことになる。

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